
誰もがこの島を楽園と呼ぶ。実際私も島を愛している。彼女は存分に休めたろうか? 私と同じくこの島を愛してくれたろうか? この二週間、ほとんど毎日、酒を飲んでは夜釣りに出かけ、港で倒れている私や、ひとの家の土間で勝手に寝ている私、星を見に浜へ出かけたはいいけれど、酔っぱらって波打ち際で水死体のように浮かんでいる私を介抱して、引きずってでも家に連れ帰り、布団で寝かせてくれた。今日の最終で内地へ帰る。今回の彼女の旅は終わったのだろう。目的は果たせたろうか? いい島だったか? 憶えていれば、いつかまた、訪ねておいで。焦ることない。島はどこにも行かん。お姉、きみが憶えてさえいれば。

私は彼女の小さな額にキスをする。それから両手の指の一本一本に。私は彼女の膝の上で眠る。彼女が私の髪を梳く。たぶん私はいつも泣いているのだろう。「マキさん、だめだよ、お酒飲み過ぎちゃ」、「うん、うん」。私はご機嫌で、愛してる、愛してる、何度も心のうちでそう呟く。夕方に、最終の船を見送る。汽笛を合図にスイッチを切る。次の瞬間から、彼女の顔も名前も思い出せなくなる。毎週のように繰り返される悲劇。私はつくづく馬鹿なのだと思う。
鍬と長靴を持って畑へ出かける。おからと生ゴミ処理機で作った肥やしを撒き散らす。もう一度土を返して、幾つか畝を作る。

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死にたい死にたいなんていってもあまり長く続くと反対側が際立ってくるんだよね、本当は。