2005年10月25日

初秋

 今日、少し言葉を研ぎ澄ます。久しぶりのことで、なかなかやり方が思い出せず、若干とまどう。悲しみで肝が黒く染まる。生きることと書くことが真逆にある。見たまま、あるがまま、と心に念じて、長靴と鍬を持ち、畑へ出かける。雑草ごと土を返して、枯れ草を積み、盛大に燃やす。釣り竿持って港へ行き、ムルーを四つ釣る。北浜(ニシバマ)へ居候の女の子を迎えに行く。

画像 010.jpg

 誰もがこの島を楽園と呼ぶ。実際私も島を愛している。彼女は存分に休めたろうか? 私と同じくこの島を愛してくれたろうか? この二週間、ほとんど毎日、酒を飲んでは夜釣りに出かけ、港で倒れている私や、ひとの家の土間で勝手に寝ている私、星を見に浜へ出かけたはいいけれど、酔っぱらって波打ち際で水死体のように浮かんでいる私を介抱して、引きずってでも家に連れ帰り、布団で寝かせてくれた。今日の最終で内地へ帰る。今回の彼女の旅は終わったのだろう。目的は果たせたろうか? いい島だったか? 憶えていれば、いつかまた、訪ねておいで。焦ることない。島はどこにも行かん。お姉、きみが憶えてさえいれば。

画像 009.jpg

 私は彼女の小さな額にキスをする。それから両手の指の一本一本に。私は彼女の膝の上で眠る。彼女が私の髪を梳く。たぶん私はいつも泣いているのだろう。「マキさん、だめだよ、お酒飲み過ぎちゃ」、「うん、うん」。私はご機嫌で、愛してる、愛してる、何度も心のうちでそう呟く。夕方に、最終の船を見送る。汽笛を合図にスイッチを切る。次の瞬間から、彼女の顔も名前も思い出せなくなる。毎週のように繰り返される悲劇。私はつくづく馬鹿なのだと思う。

 鍬と長靴を持って畑へ出かける。おからと生ゴミ処理機で作った肥やしを撒き散らす。もう一度土を返して、幾つか畝を作る。

画像 012.jpg

 
posted by kawai toshio at 02:41| Comment(1) | TrackBack(1) | 雑記 | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする

2005年10月09日

絵日記

 私がこの島に来て、民宿の手伝いなどしながら、半自給自足の暮らしをするようになって、二ヶ月と少しが経つ。

01.jpg

 お客さんの写真を撮ってあげるのも、私の仕事です。

02.jpg

 この島には、世界一美しい海と夕日と星空のほかに、何もないものだから、空の様子や風向きなどを見て、その時々で自分が一番美しいと思うところへ、旅人を案内します。

03.jpg

 リゾートアイランドとしての慶良間だけではなく、美しくも、素朴で哀しい琉球の島々での暮らしを僅かにでも知ってもらいたく、お隣のゲルマ島(人口90人)のタケ爺のところへ、やはり若い旅人を連れて行って、半音ずれた三線を聴かせたり、唄ったり、あるいは大昔に録音された那覇の放送局のラジオなど聴きながら、ごろりと昼寝したりします。

04.jpg

 この夏は、毎日大勢の旅人を出迎え、また見送った。私は私の愛したこの島を、訪れてくれたすべての旅人に、私と同じほどに愛してほしかった。

 旅人たちが島を去って行く。皆、旅の途中なのだ。私は彼らのうち、ただの一人の名前も、顔も、憶えていない。島で暮らすということは、そういうことなのだと思う。私の旅は終わった。私はすでに旅人でない。

 アザナムイの展望台で、波の音を聴く。ミーニシが吹いて、明日からはサシバの舞う季節。島の人々ですら、退屈と孤独を嫌い、ある人は那覇へ、ある人は内地へ、一人また一人と去っていく。私はこの島に居て、毎日港で釣り糸を垂れながら、船の着くのを待つ。ガイドブック片手に上陸してみたはいいけれど、人影もなく、案内所もなく、店の一軒もない、リゾートとは程遠いクソ田舎のこの島の港で途方にくれる旅人を待つ。
「おーい! 泊まるとこ、決めてねえの?」
「えっ?」
「決めてねえなら、ウチ来なよ。何にもかまっちゃやれねえけど、布団と便所とシャワーがあるぜ」
 
 今日の獲物はビタロー三匹に二キロのタマン。

「ねえさん、魚好き?」
「え? はい、まあ…」
「そんなら今日はメシ付で一泊2500円!」
「いいんですか?」
「じゃ、決まり。ちょっと待ってて」

 釣り道具を片付けて、ビクを上げる。上出来。上等。完璧。天才!
 後ろに知らない旅人を乗せて、原付バイクでたったの七百メートルしかない島の集落を走る。

「ねえさん、内地のひと?」
「Y県です。島の方ですか?」
「おれ? 横浜!」

 やはり私は、彼女の顔も名前も憶えてはいられないだろう。毎日旅人を出迎え、送り出す。島で暮らすということは、孤独に堪えるということなのだ。


posted by kawai toshio at 00:10| Comment(8) | TrackBack(1) | 雑記 | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする

2005年10月04日

ハイサイ!

 なんだかいろいろ心配、ご迷惑おかけしてごめんなさい。今、慶良間の阿嘉島という、人口三百人かそこらの島で、毎日海で魚を釣ったり、貝を獲ったりしながら暮らしています。

 ここは世界一美しい島です。
posted by kawai toshio at 12:32| Comment(6) | TrackBack(0) | 雑記 | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする

広告


この広告は60日以上更新がないブログに表示がされております。

以下のいずれかの方法で非表示にすることが可能です。

・記事の投稿、編集をおこなう
・マイブログの【設定】 > 【広告設定】 より、「60日間更新が無い場合」 の 「広告を表示しない」にチェックを入れて保存する。


×

この広告は1年以上新しい記事の投稿がないブログに表示されております。