2005年02月20日

裏切り

 私にはただ教養と経験と、才能の足りないだけで、愚昧厚顔、無能ななりに、今のやり方自体は、間違えていないと思う。

 雪になった。少し吹雪いてる。悪くない。
 いや、深夜に街灯を見上げて、そこに冷たい結晶の舞っている様を見るというのは、ひどく気分のいいものだ。そう、ようするに、いい夜だった。が、それを語るべき相手はいない。言葉など、人間も含めた、自然に対する抽象にすぎない。私の書くより人との対話を好むのは、それがまさに捨象であるからだ。文言になった後の残滓、人間。傲慢だ、なんて批判は置いといて、だって、然より言葉を抽出するこの苦痛! 貴様等、真面目で有能で、多才で、苦悩に満ちた美男美女に解るかよ。工夫はやらしい。虚しく不潔な思考の努力を経て、痴呆じみた戯言、人間。それを語るは、至上の享楽(相手が美人なら、尚よし)。が、今宵はその相手もない。

 言葉に対して、真摯であれば、その者は、狂者に同じ。私より立派な、私の大好きな人たちが、私を軽蔑する。

 一日経った。経過の為に、己の全部投げ出した。大げさ過ぎる? やっぱり気が狂ってるって思う? 正気だよ。ただ、でないと世界を消費できない。当然のことだ。

 血走った、朝。
「やあ。婆さん。いや、ママ。朝からパチンコ?」
「あら、見違えたわ。髪、ずいぶん伸びたんじゃない?(しばし、沈黙)そんな目、たった今、人を殺してきたみたい」
「それは、ずっと昔の話。今は、おれが殺される側。こんな感じにさ、無防備に」
「もう、せっかくハンサムなのに。しゃんとしよう。また痩せた? お金、いるの?」
「あんまり、甘やかさないで。知ってるでしょう。おれ、偽物だから」
「泣いちゃだめよ、色男」
「いやだ。うるせえよ、ババアって、いいたい。テメエに何が解るって、いいたい。でもおれ、たったの二へんしか会ってない、あんたに、そういえない。やめてよ。みんな、真面目に生きてる。だから、おれ、ひとりでいたい」
「うん。だからね、泣いちゃだめ、色男。格好つけて、堂々としてなさい。素敵よ」
「やめて、やめて。終わらせたい。苦しいからね。けど、あんたには話したくない。若くてきれいな、無知に漠然と、おれに好意を持ってくれる、そんな女の子がいい。そんな子に話して、終わらせたい」
「…抜群なんだけどねえ、マキ。私も、もう三十若かったら、ね」
「いやだよ。婆さん、ママ。もう話し掛けないで。おれは嘘つきだ。ひとりでいたい。生きてるの、恥ずかしいんだ」




posted by kawai toshio at 12:33| Comment(2) | TrackBack(1) | 雑記 | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする

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